奇跡の復活を遂げた谷沢の物語の後編です。1980(昭和55)年開幕。前年の終盤に見事復活した谷沢ですが、さすがに直ぐにスタメンとはいきませんでした。ましてや同じ一塁手には主砲大島康徳がドーンと構えており、当時の中利夫監督は「谷沢は代打の切り札」くらいに考えていました。
しかし開幕して間もなく、その大島が名古屋市内であわや右目を失明するか、というほどの大きな個通事故を起こしてしまいました。そこで谷沢に思いもかけずスタメンのチャンスが回ってきました。すると谷沢は打つわ、打つわ。まるで2年間のブランクのうっ憤を晴らすかのような打撃。早速4月に月間MVPを受賞。同月、私が毎週購入していた週刊ベースボールのグラビアに谷沢が特集され、その見出しが「背番号41 頼れる 帰って来たウルトラマン」でした。「オッ、うまいこと書くなぁ」と感激しました。これが後々の谷沢の応援歌に繋がるのです。
そしてこの年、何と打率.369のハイアベレージで2回目の首位打者に輝きました。更に特筆すべきは、本塁打27本、打点80とこの時点での自身のキャリア・ハイを記録。長打力と勝負強さがアップしたことです。勿論この年のカムバック賞も受賞しました。
その復活を支えたのは、自宅でも毎日行っていた例の酒マッサージ👇 と

両足のアキレス腱の部分をカバーする甲の高いスパイク👇(隣の井手コーチのスパイクと比較するとその違いは一目瞭然ですよね)です。

翌1981(昭和56)年も打率.318、28本塁打、79打点を記録。更に翌1982(昭和57)年は前半は打撃不調に苦しみましたが、巨人とのデッドヒートとなった9月、10月の終盤には「帰って来たウルトラマン」の軽快な応援歌にマッチした勝負強い打撃と長打力が爆発。江川を打ち崩すなど本当に頼れる四番打者でした。メチャ、カッコ良かったわぁ~。👇

圧巻は10月18日(月)のVS横浜戦。この年のセ・リーグ最終戦で、この試合にドラゴンズが勝てばドラゴンズが優勝。負ければ巨人が優勝。という超プレッシャーがかかる一戦。頼れる帰って来たウルトラマンは皆のプレッシャーを解き放つような見事な先制本塁打を打ってくれました。👇

ドラゴンズが8-0で勝利し優勝!祝勝会では酒樽をぶちまけての大はしゃぎ。👇あまり派手なことをしない谷沢にしては珍しい。よほど嬉しかったんですねぇ。

そして1984(昭和59)年。入団15年目の37歳で打率.329、34本塁打、99打点を記録。打率以外はこの年がキャリアハイとなりました。
入団からの8年間の平均は打率.294、14.5本塁打、54.8打点。2年間のケガのブランクを経て、11年目から復活し、引退までの7年間の平均は打率.313、22.1本塁打、73.1打点。歳を取るほどに長打力がアップしていったという不思議な選手です(笑)。
早稲田大学時代は山本浩二(法政大学→広島)よりも本塁打を打っていたし、通算22本の当時の記録保持者の田淵幸一(法政大学→阪神)とほぼ同数の18本を打っていただけに、故障前の谷沢に私は少し物足りなさを感じていました。
しかし復活後は長打力も勝負強さもアップ!メッチャ大好きになりました。アップした理由を谷沢は「アキレス腱痛を克服してからは下半身に力を蓄えてどっしりと構えられるようになり、リラックスした上半身で体の回転で打つ術を身に付けた。それが長打力アップに繋がった」「故障前はどこを狙って打つかとか綿密に考えて打席に立ったが、復活後は『どうせ一度は引退を覚悟した身。それを皆さんの力でカムバックさせてもらえたのだから、野球が出来ることに感謝して打球の行方はボールに聞いてくれ』と良い意味で開き直れるようになった」とも言っていました。人間的にも一回り大きくなったんですね。素晴らしい!
まだあと2年くらいは現役選手として活躍出来ると思っていましたが、1986(昭和61)年オフ。星野監督の第一次政権の誕生に伴い、17年間の現役生活を終えました。
これで3回の連載は終わりましたが、次回は最後に、その星野監督との関係について書きます。お楽しみに。
余談:谷沢の実家は千葉県柏市の駅前にあるスポーツ用品店です。ある日曜日、私と妻(当時は結婚前だったので、彼女か)はそのスポーツ店に行きました。するとお店番をしていたお母さんが「あらぁ、お父さ~ん、またまたドラキチさんが来たよぉ~」と、裏にいたお父さんを呼びました。よほど沢山の私の様なドラファンが訪れているんだなぁ、と思わず笑ってしまいました。
そう言えば、復活した後の谷沢は
ハイカットの特別なスパイク履いてましたね。
復帰しても1シーズンだけという選手も多い中
谷沢は復活した後の方が成績が良くて
長く続きましたからね。
まさに奇跡の復活ですよね。
それにしても、堀場さんの奥さんは
出来た人ですね~
東京を西から東へ横切って、
茨城の手前まで付き合ってくれるんですから。
宗さん、いつもメッセージをありがとうございます。どうせ一日、デートで一緒にいるんだからどこに行っても一緒でしょう(笑)。と、言ったら嫁に失礼ですよね。よくついてきてくれました。